説教:小手川 到 牧師
申命記 10章12節~21節
ヘブライ語で「シャローム(平和)」は、平和の意味にとどまらず、人の尊厳が守られ、生命が脅かされず、精神的にも物質的にも満ち足りている状態を意味します。申命記はそのような社会を実現するための指針を示します。今私たちは紛争や分断、不寛容に直面しています。自国の利益や自民族を優先するあまり、境界線の外側にいる人々を排除しようとする動きが後を絶ちません。人は豊かになり安全な立場を手に入れると、過去に自分がどれほど無力で、他者の助けを必要としていたかを忘れてしまいます。かつての自分と同じ境遇にある人々に対して、今度は冷淡で容赦のない態度を取るようになります。聖書はそのような病に対して、「あなたがたの原点を忘れるな」と迫ります。「あの苦しみや痛みを他の誰にも味わわせてはならない」。この思いこそが負の連鎖を断ち切り、平和を生み出す原動力となります。私たちには負の歴史があります。戦争の惨禍を単なる過去の記憶ではなく、今、目の前で苦しんでいる人々への共感センサーとして働かせるとき、私たちは国境や民族の壁を越えて、平和の手を差し伸べられるようになります。分断と紛争の荒れ野の世に、「平和のオアシス」が形成されていくことを信じます。

